思い出にすがる。
思い出にすがる。
そういう歳だ。
若者に唯一勝てるのは、思い出の数だけである。そうあきらめている。
捨てられない物がある。
基本的には「捨て魔」なのに、捨てられない物がたくさんある。
良く言えば「丁寧な性格」なのだが、
悪く言えば「ケチクソ」なのかもしれない。
35年前、新婚旅行先のウィーンで記念に購入した妻の財布。
中はボロボロで使えなくなった財布だが、捨てられない。
結婚と同時に、新宿の設計事務所から独立したはいいが、仕事の依頼が全くなく、そんな時だから新婚旅行どころではなかった。
そんな時の財布だ。
捨てられない。
その前年、結納の返礼としてCanonEos620一眼レフカメラと一緒に頂いた「Canon」と「吉田カバン」が共同製作したカメラバッグ。
捨てられない。
稽古場を開設した時から使っていたディズニーのからくり時計。
今はもう動かない・・・
でも、捨てられない。
「こんな気持ち悪いバック、ヤダ!」と妻にけちょんけちょんに言われたジェイコブスのトートバッグ。
親しい友人から「すっごく素敵なバック!」と、言われてから、ボロボロになるまで、ずーっと使い続けてくれた。
これも捨てられない。
決して高価なものではないのだが、その「物」に、それを買ったその時代に「思い出」がある。
若者よ、今、この時が、いつの日か思い出になる。
今、購入しようとしているその「物」が、いつか風景と共に、思い出になる。
何でもかんでも売り飛ばすな!
たわごとだな。




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