手紙
毎年、この季節になると美味しい和菓子を送って下さる方がいる。
恐縮している。
いつも頂いたまま、言付けでのお礼を伝えるだけだったので、年明けに、気持ちばかりの品物を送った。
贈るものは自分の好物を送ることにしている。
上野広小路にある「どら焼き屋さんのお汁粉」が大好きである。
何日かして、手紙が届いた。
送ったお汁粉の礼状である。
手紙は、自筆で書かれ、小説のような美しい文面だ。
一文を勝手ながらご披露させていただこう。
「長い年月が過ぎ、その味を探したことすらすっかり忘れていました。頂戴した和菓子の箱を開けたとたん、何十年かぶりにあの夢の味を、その味をさがしたことを、思い出しました。」
戦後、甘いものが手に入らなかった時代に幼少期を過ごした経験が、前文に書かれていた。
素敵な手紙を頂いた。心があたたかくなった。
学生時代、一人暮らしをしていた部屋に、母から手紙が届いた。
達筆な文字で田舎の近況や、父の健康状態、そして僕の身体への労いが綴られていた。
その頃の僕はというと、花の東京でアルバイトと麻雀に明け暮れていた。授業や課題のことを思い出さないよう、間違った方向で頑張っていた。
母からの手紙は、「追伸、父はあなたを信じていますよ」と、終わっていた。
涙が止まらなかった。
たった一通の手紙が、生き方を変える力を持つこともある。
その手紙は、今でも僕の「バイブル」になっている。
信じてもらえる生き方をしているかどうかは、何年か後に父に会った時、聞いてみよう。
「手紙・・・」
僕は好きだな。
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