ささやかな、こだわりがある。

生きていれば誰にでも「こだわる」ものがある。

「いやあ、僕は特にこだわりは無いなあ」と、言う人は、知らずしらずのうちに「こだわりを持たない」という「こだわり」を持っているのである。

僕は、なににつけ「こだわる」

持ち物、食べ物、服装、靴に至るまで、こだわる。

と言って高価なものを持っているわけではない。高級な料理を好むわけではない。

時計は昔から「SEIKO」、これが最後の食事だぞ!と言われたら、迷わず「カツ丼」を注文する。

「B級こだわり」なのである。


コーヒーカップにこだわる。

このデミタスカップは、すでに50年近く使い続けている。

高校生の時、栃木県の山に登った時、小さな小屋で器を焼いていた名も知らぬ若い作家から、300円で売っていただいたカップだ。

その作家が、その後有名になったかどうかは知る由もないが、もし、この写真が偶然目に止まったなら、連絡してほしいものだ。

家にはデミタスカップがたくさんある。

デミタスカップを集めるのも趣味の一つだ。

数えたことはないが、マイセン、ヘレンド、コペンハーゲン、ウェッジウッド、ジノリ、大倉、ノリタケ・・・ゆうに100客は超えていると思うが、すべてお客様用である。

50年近く、珈琲はあの300円のカップしか使っていない。

「こだわり」である。


カップにもこだわるが、中身の珈琲にもこだわる。

二十歳で妻と出会い、そのころから杉並の妻の実家の近くにあった「宮本珈琲店」の常連になった。

結婚するまでの10年間、宮本珈琲店の「ブラジルサントス深煎り」を飲み続けた。

写真の「宮本珈琲店」のマグカップは、「お店を閉店します」との挨拶文と一緒に送られてきた。あれから20年は経ったろうか。

結婚してつくばに移って、コーヒーファクトリーと出会った。

35年近くコーヒーファクトリーの「グァテマラ」を飲み続けている。

コーヒーファクトリーのお嬢様がバレエ教室に入ってこられたのは偶然だった。

それから2、3年経った頃だろうか、コーヒーファクトリーのマスターとママが、ジプシーバレエ教室を見かねて、「うちの2階、スタジオに使ったらどうですか?」と、言ってくださったのが今に繋がっている。

だから「平多武於舞踊研究所つくば」の住所は、「コーヒーファクトリー2F」と記載する。

そういえば、妻と出会ったのも珈琲専門店だった。

僕のつたない人生には、「珈琲」が深く関わっているようだ。


二人の息子に話したことがある。

「パパが天に召されたら、命日にはグァテマラ、墓で淹(い)れてくれ」と。

長男に軽くいなされた。

「誰が『天』と決めたんだ?」


・・・そりゃそうだ。



     


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