隠れ家(かくれが)がある

 仕事に追われている。

この歳になって、朝から夜中まで図面を描いている。

事務所のみんなから

「大丈夫ですか?今日も遅くまでやるんですか?」と、心配してくれる。


昼下がり、事務所のみんなに「すこし寝てくる!」と言って、蔵の上に作ってある隠れ家で横になる。蔵と言っても本と登山用具しか入っていないのだが・・・

ここはじつに居心地がいい。

目をつむると、上高地の帝国ホテルにいるような気持ちになれる。

木の香りがする。

先日、書斎の隣の音楽を作るアトリエにグランドピアノが入った。

次男が小学生の頃習っていた有名なピアノの先生から、
「あずかってほしい」とお願いされ、スペースがあったものだから預かることにした。

なかなか素敵なアトリエになった。
ピアノ、しばらく弾いていないな。また、はじめようかな・・・

書斎ではもっぱら読書にふける。
ここは誰にも邪魔されることなく、ショスタコーヴィチを大音量でかけ、
屋根裏の狂人になりながら、今は野間宏を読んでいる。

さあ、もうすぐ5時になる。
そろそろ仕事に戻ろう。

この忙しさが終わったら、児童舞踊の作品を仕上げよう。

今は、それだけが唯一の楽しみだ。
コンクールに参加する生徒諸君、身体を柔らかくしておかないと、
袖幕の横で、「木」の役にするぞ。

ほんとにそれができちゃうから、残酷(やさしい)な舞踊作家(じょうじせんせい)なのである。

コンクールに参加するみんな、

がんばれよ。

がんばらないと、「想い出」には

ならない。





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