失恋したわけじゃない・・・
妻が仙台から新千歳に飛んだくだりまでは良かった。
ひつまぶしも、う巻きも美味しかった。
生徒はコンクールでがんばり、能楽堂でのパフォーマンスも素晴らしかった。
良いことばかりは続かない。
妻は新千歳で列車に乗り、次男の住む新得町へ向かった。
疲れもあったのだろうか、その途中、大切なバッグをどこかに置き忘れてしまった。
次男の住む新得町駅に降り立ったとき、バッグが無いことに気づいたそうだ。
血の気が引いたことだろう。
しかし、そんなことはよくあることだ。
僕も、パリに一人旅をしたとき、ルーブル駅で、足下に置いておいた現金やカードやパソコンが入っているゼロハリバートンのアタッシュケースが消えた。
パリではよくあることらしいから、しかたが無い。
妻のバッグは駅員さんが奔走してくださり、乗り換えの駅のベンチで見つかった。
良かった。
ただ、妻は、雪国を甘く見ていた。
どこまで行っても一面雪の中・・・
仙台コンクールの荷物が入ったキャリーケースを引きずりながら、雪に埋もれた道なき道を歩いて行った。
そして妻は、よくニュースで見かける
「観光客がなれない雪道で転倒し、腕を骨折したようです」
の一人になった。
近くにいた方が救急車を呼んでくださり、隣町の病院に搬送されたそうだ。
まあ、これも、よくあることだ。
僕も小学生の時、体操部にいたものだから、鉄棒や跳び箱で、両手首両足首、骨を折っている。
そもそも、雪国で一人暮らしをしている次男がふびんだったので、妻に
「仙台までいくなら嶺のところへいってあげれば?」と言ったのは、この僕だ。
怪我までは頼まなかったが、やはり、僕自身、責任を感じている。
妻に対する責任ではない。
生徒に対して、申し訳が立たない。
コンクールを間近に控え、振付者が腕を骨折した。
生徒のみんな、保護者の皆様、本当に申し訳ありません。
普段から、「ダンサーは体調管理、特に怪我だけはしないように!」と、鬼の形相で言っている指導者が、このていたらくである。
せいとのみんな、ほんとうにごめんね。
みんなの力で、おっちょこちょいの先生をフォロー、カバーしてあげてください。
「北海道へ行け」と言った手前、介護はへこたれません。
ただ、女性の髪を洗うという作業が、こんなにたいへんなことなんだと、思い知った。
昨日、妻は、長い髪をバッサリ切ってきた。
ちょっと、可哀想だったな。
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