「頑張るな!」

 久しく雪のない冬だったが、という書き出しは、被災地に対してあるいは豪雪地方に対して無礼極まりないが、子どもの頃から雪を期待していたのも事実だ。

北陸に早い春が来ることを、心から祈り、心から願っている。

雪が降ると、我が家(実家)は水墨画の風景になる。

この写真は紛れもなくカラーで撮影したものだ。

雪は子どもの頃から大好きだった。

学生時代、雪山にとりつかれ、親の心配をよそに冬の穂高に幾度も登った。至福の山だった。結婚前に上高地からの前穂高を自慢げに妻に見せた。

しかし、長男が札幌のお嬢さんと結婚してからは、そうも言ってられなくなった。

「雪かき」が、いかに重労働であるかを知った。


北海道は旅行で行くだけの美しく美味しいところだったが、ここ数年で急に身近なところになった。

何の縁か、今年大学院を修了し都心の企業に就職した次男の、最初の赴任先が北海道。

占冠(シムカップ)村ペンケオタソイ川に橋を架けるそうだ。

昨日の次男との会話。

「元気にやってるか?」

「ああ、生きてる」

「寒いだろう・・・雪はどうだ・・・」

「今日は18度だ」

「おお、春の陽気だな!」

「マイナスだよ・・・」

温室で育ててしまった息子が、-18°の現場に立って、おそらく上司に怒鳴られているんだろうと想像しただけで、悲しみが止まらない。

叙々苑のキムチ鍋の素を送った。


「頑張るな!」

心の中で、つぶやいた。




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